※ Retty Advent Calendar 2019 2日目の記事です。
昨日は 西村さんの記事で、 Amazon Aurora 移行大全 #1 でした。
はじめに
こんにちは。広告コンテンツ部門の進藤です。
広告コンテンツ部門がなにをしているか。
一言でいうと、Rettyサービスを収益化する部門になります。
Retty のビジネスモデルは大きく3つあります。
- 飲食店向けの集客支援事業
- 企業向けのプロモーション支援事業
- データビジネスソリューション事業
このうち、2.『企業向けのプロモーション支援事業』と、3.『データビジネスソリューション事業』を、広告コンテンツ部門が担当しています。
本ブログでは、2019年の広告コンテンツ部門での取組みを振り返り、まとめました。
とくに注力してきた『データビジネスソリューション』『PMP(プライペート・マーケット・プレイス)』を中心にお話していきます。
ちなみに、2018年の取組みもアドベントカレンダーで書いているので是非読んでみてください。
Rettyマネタイズを支える広告商品開発
Rettyマネタイズを支えるプログラマティック広告運用
課題に向き合った1年間
2019年10月に広告コンテンツ部門を発足しましたが、それまで様々な課題がありました。
- 『プログラマティック広告運用』と『純広告営業』が別部門によることの広告収益最大化の設計が困難
- 職能別 (開発・営業) に部門を分けていたことで、商品開発・営業の足並みが揃わない
- バーティカルメディアゆえの、新規クライアントの発見・提案・取引拡大が困難
- 純広告・タイアップ広告・プログラマティック広告の収益を2倍3倍にする施策の頭打ち感
これらの課題に向き合い、戦略・体制を組み直しました。
また、収益化の軸をどこにおくか、どこに注力して収益をのばしていくか、ということも検討をしました。
Rettyの場合は、数年前からデータ活用に注力してきたことと、いまの市場トレンドを捉えて、『データビジネスソリューション』『PMP』を軸に収益を伸ばしていくことに決めました。
データビジネスソリューション
データビジネスソリューションは、クライアントに対して、データを活用したソリューションを提供します。
後述する『Food Data Platform』がデータビジネスソリューションのメインプロダクトになります。
これまで、広告という文脈だと、クライアントからすると「1媒体の広告枠」という見方から脱却できない、という課題がありました。
そうなると、Rettyのようなグルメメディアに、純広告として出稿するクライアントが限られてきて、新規クライアントの発見・提案ができずにいました。
データビジネスソリューションに取り組むことで、たとえばRettyの保有する飲食店情報を、クライアントのサービスに組み込み、新たなユーザー体験の創出・マーケティング活用・トレンド分析・商品開発といった活用用途が広がり、これまで取引のなかったクライアントと繋がることができるようになりました。
誕生背景と事例を紹介していきます。
データビジネスソリューション誕生背景
広告コンテンツ部門でデータビジネスソリューションを立ち上げた背景を説明します。
1つ目は、市場トレンドです。
これまでのビッグデータを自社で収集・活用する、流れから、外部企業とのビッグデータ連携活用のトレンドが高まってきました。
実際に、クライアントから、Rettyが保有する飲食店情報を連携できないか、という問い合わせが増えてきています。
データビジネスソリューションを取り組むことでで、新規クライアントに提案・取引拡大できるチャンスと捉えました。
2つ目は、テクノロジーの方向性がマッチしたこと。
Rettyでは数年前からデータ活用に注力していて、豊富なデータと、機械学習・自然言語処理を活用して、飲食店のキャッチフレーズ自動生成や、美味しそうな料理画像を見つける技術を開発してきました。
今後もデータ活用技術に注力することもあり、外部企業にソリューションを提供することに決めました。
データ活用事例をいくつか記載しておきます。
- Retty流『2200万ユーザを支える機械学習基盤』の作り方
- 料理画像の分類からコンテンツ制作まで 実名グルメサービス、Rettyを支えるAI活用の舞台裏
- Rettyの意思決定を最大化!データ分析チームの取り組みをご紹介
『Food data Platform』をローンチ
次にデータビジネスソリューションの事例紹介です。
2019年10月に、ビッグデータ連携基盤『Food Data Platform』をローンチしました。
実名口コミグルメサービスRetty、食領域のビッグデータ連携基盤「Food Data Platform」を提供開始!
Food Data Platform とは、
Rettyで蓄積された店舗基本情報・口コミ・画像・レコメンドエンジンを、外部企業のサービスとシームレスにデータ連携するビッグデータ連携基盤です。
このプレスリリースは、出光興産様との取組み事例になります。
出光興産様が運営する「ドライブコンサルタント」に、Rettyが提供する飲食店情報を組み込むことで観光スポットから飲食店までワンストップで旅行のスケジュールを立てることが可能になりました。
そのほかにも何社か導入を進めていて、新たなユーザー体験の創出・マーケティング活用・トレンド分析・商品開発といった活用をしています。
まとめ記事自動生成ソリューション
また、Food Data Platform の一機能として『まとめ記事自動生成ソリューション』も提供しています。
Rettyが2018年にリリースした機能で、口コミ情報をもとに自動まとめ記事を生成しています。
Rettyが『まとめ記事自動生成ソリューション』をリリースした背景でいうと、外食はトレンド・ニーズの移り変わりが早く、例えば、『電源カフェ』といった近年検索が増えている検索ワードに対して、まとめ記事を自動生成することで、外食のトレンド・ニーズに素早く応えています。
そして、2019年から外部クライアントにも提供を開始致しました。
現在は、ECサイトのような、商品情報と口コミを保有するクライアントにご利用いただいています。
PMP (プライベート・マーケット・プレイス)
2019年はPMPの営業拡大にも注力しました。
PMPに注力した詳しい背景は後述しますが、ざっくりいうと下記になります。
- 市場トレンドとしてPMP市場が伸びていること
- 広告事業者・広告代理店もPMPに注力していること
- 2018年に注力してきたヘッダービディングの収益向上の頭打ちが見えたこと
- OA(オープン・オークション)に比べて、広告単価が高いこと
- 前述したデータビジネスソリューションとPMPをパッケージングで販売することで、クライアントに対して幅広い提案ができること
PMPの営業拡大にあたり、重要な下記要素を整えてきました。
- PMP営業方針
- 既存広告運用コスト削減 (=リソース確保)
- 商品メニュー設計
- 営業体制構築
PMPに注力した背景
PMPに注力した背景を、Rettyのプログラマティック広告運用の歴史から紐解いて話していきます。
2017年以前、Rettyの広告運用は、GoogleAdXを流してフロアプライスを切って、入札がなければパスバックでフィラーネットワークに流す、という運用をしていました。
運用レバーとしては、フロアプライス調整とフィラーネットワークの単価交渉 (枠買い切り) でした。
当時は多くのメディアで、こういったプログラマティック広告運用が採用されていました。
2017年後半、ヘッダービディングに注力することになります。
背景として、広告枠を増やすのでなく枠単価をあげたくて、実現できるソリューションを検討していたところ、ヘッダービディングに至ったということです。
ヘッダービディング導入に注力して、枠単価を上げることで、単価・品質ともに高い広告の配信が増え、プロジェクトとしては成功を収めました。
2018年前半、さらに収益を上げるべく、ビッダー導入数を増やしていき、10数個導入した結果、課題にぶち当たります。
ビッダーを追加するための開発コスト、レポートを管理するための運用コストが上がってきました。
さらに、ビッダーを入れれば入れるほど、広告収益が増えていくのではなく、広告収益の頭打ちが見えてきたことです。
2019年、ヘッダービディングによる収益向上の頭打ちが見えたことで、細かくPDCAを回して収益向上を狙うよりは、次なる収益源を模索することにしました。
市場トレンドとしてPMP市場が伸びていることと、配信事業者・広告代理店がPMPに注力していることもあり、RettyとしてPMPを注力することに至りました。
PMP営業方針
RettyのPMP営業方針としては大きく2つあります。
1つ目は広告代理店・広告事業者に、PMP商品メニューをおろします。
広告代理店・広告事業者が、広告主に提案・販売をします。
2つ目は直接広告主に提案して販売する。
メディア単体でPMPを販売するのが難しいことも理解しており、
前述したデータビジネスソリューションと掛け合わせてパッケージングして提案・販売します。
既存広告運用コスト削減
まず、プログラマティック広告運用のコストを削減するための取り組みに注力しました。
ヘッダービディングの導入を進めて、下記のような課題が存在していました。
2018年頃の、ヘッダービディング導入直後のアーキテクチャと課題をまとめたものは下記になります。
これらの課題に向き合い、積極的に外部委託・プロダクト導入を進めました。
- フロアプライス管理は、ジーニー様のプロダクトを利用
- 広告収益・レポート一元化は、エンハンス様のプロダクトを利用
- Prebidのビッダー追加・運用管理は、FLUX様に委託
その結果、2019年4-6月は下記のようなアーキテクチャと課題になっています。
2018年頃に顕在化していた課題は解消されました。
このように、ひとつずつ課題を解消していくために、事業者に委託・プロダクト導入をして、プログラマティック広告の運用コストを減らしていきました。
今後出てくる課題についても、細かいPDCA施策は積極的に外部に委託し、収益源のコアとなる施策や基盤開発に注力していく予定です。
また、2019年4-6月のアーキテクチャと課題を見てわかる通り、2018年頃に顕在化されていた課題は解消されたものの、広告運用における新たな課題が増えています。
パブリッシャー側の運用レバーが増えていること、運用が複雑化していることもあり、プログラマティック広告のトレンドを追えば課題がどんどん出てきます。現時点だと、すでに半分ぐらいの課題が解決済みですが、課題解決できる事業者・プロダクトがあれば都度提案ください。
商品メニュー設計
どういった商品メニューをクライアントに提供していくか。
PMPは動画広告案件が多く、PMP注力するとなると、動画広告専用の枠設置にいきがちです。
ただし、メディア方針として、動画広告の枠設置が困難なことも事実です。
Rettyも例外ではなく、動画広告設置のテスト配信を何度も行い、メディアKPIと比較しているものの、本導入まで至っていません。
そこで、Rettyでは、もともと純広告で展開しているRettyブランディングアドを、PMPで実現できるようにしました。
これにより OA では購入できない視認性の高いPMP商品を提案することができています。
またPMPに注力している代理店も、ブランディングを目的とした広告をPMPで配信できるようにしたい、という意向もあって、スムーズに代理店との座組が固まりました。
下記がPMP商品メニューとなっております。
営業体制
10月に広告コンテンツ部門を発足して、
新規商品である『データビジネスソリューション』『PMP』と、既存商品である『純広告』『タイアップ広告』『アライアンス』を、
1つの部門で、営業・企画・開発ができるように整えました。
- 営業チームは、各商品の数字責任というよりは、全体の数字責任をもち、全ての商品を営業します。
- 企画チームは、各商品のビジネスロードマップを描き、カスタマーサクセス体制を整えます。
- 開発チームは、プロダクトロードマップを描き、商品開発・施策開発・基盤開発をします。
10月以前は、職能別(営業・開発) に部門が分かれていたことにより『プログラマティック広告運用』『純広告営業』の担当は別部門でした。
そのことによる課題として、広告収益最大化の設計が困難であること、商品開発・営業の足並みが揃わない、ということがありました。
今のところは、上記課題が解消され、ワークしているように感じます。
もともと、広告コンテンツ部門を発足した際の懸念事項として、営業チームがワークできるか、が気がかりでした。というのも、これまで営業チームが扱ってきた商品とは特性が大きく違う、データ・プログラマティック広告を取り扱うことになるからです。
結果的には杞憂に終わり、良い方向でワークしています。
営業チームはすべての商品を販売することになって、商品理解に苦労するかと思いましたが、
各商品に精通しているメンバーがいたことと、同じ部門内で商品開発・運用する体制により、お互いのナレッジを共有し合い、商品理解が一気に進みました。
また、PMPはプログラマティック広告の概念が強く、純広告・タイアップ広告の営業をしていたメンバーからは受け入れづらいものかと思いましたが、
いまの商品は、純広告のリプレイスであり提案内容は大きく変わらないこと、代理店が挟んだときの商流をしっかりとすり合わせすることで、スムーズに受け入れられたことも良い学びでした。
今後の構想
『データビジネスソリューション』『PMP』ともに、いくつか案件が獲得できて、成果がでてきている状況ではありますが、まだ体制を整えてばかりなので、引き続き拡大に動いていきます。
また、今後やっていきたいこととして2つほどあげます。
1. 飲食店向けの集客支援事業との連携
データビジネスソリューションのクライアント提案にあたって、飲食店向けの集客支援事業で提供している商品とも絡むことが多くなってきました。
いまは飲食店向けの集客支援事業とは別部門になりますので、連携に苦労していますが、将来的には統合して、ソリューションを提供できるようにしたいです。
そうなってくると、プロモーション支援・データ活用が絡んだ商品を、飲食店に提供することができ、外食市場にインパクトを与えられるのではないかと楽しみではいます。
2. バーティカルメディア同士の協業・商品開発
バーティカルメディア単体では広告主のKPIを満たすことが難しいなと考えています。
広告主のブランドが多種多様なシーンで利用されているからです。
ブランド接触者により有効にリーチしていくためには、グルメメディア単体ではなく、内食メディア・旅行メディア等と協同して商品開発をする動きをする必要があると考えています。
こちらについては、取り組みが進んでいて、近日ローンチする予定ですので、楽しみにしておいてください。
ではでは