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Retty データ分析チーム2022振り返り

この記事はRetty Advent Calendar 2022の22日目の記事です。

adventar.org

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Rettyのデータ分析チームMGR平野です。
毎年恒例の”Rettyデータ分析チーム振り返り記事”です。(過去記事:2021年 / 2020年 / 2019年 / 2018年

今年は、去年掲げた今後の課題”データマネジメントの強化&定量/定性分析の精度向上”に対する変化という視点で書きました。

<去年掲げた課題と変化>
課題1:データマネジメントの強化
→変化①:データ基盤の運用を"内製ツールで全部やる"から"外部ツールやSaaSを積極活用へ"

課題2:定量/定性分析の精度向上
→変化②:ディスカバリーの関心事が”やる・やらない”から”やり方・プロセス”に

そして記事の最後は、来年のデータ分析チームの体制変更について触れています。ぜひ、最後までご覧いただけると嬉しいです。

変化①:データ基盤の運用を"内製ツールで全部やる"から"外部ツールやSaaSを積極活用へ"

これまでのデータ基盤の運用体制は、専属データエンジニアを主体に運用する方針をとっていました。しかし今年、直近数年の方針としてデータ基盤の運用をデータエンジニア主体からデータアナリスト主体にすることを決めました。理由は複合的ですが、データエンジニアの採用難易度の高さの観点と、近年のデータ基盤ツールの充実によって内製で頑張るよりも低コストで良いものが使えるようになった点を踏まえると、データアナリスト主体で運用するほうがコスパが良いと考えたからです。

このパートでは、具体的にどのような方針でデータアナリスト主体の運用体制を整えたかを紹介します。

<方針>
1/ 運用スコープのフォーカス
2/ ”内製サービス”から”SaaS・マネージドサービス”への移行

方針1:運用スコープのフォーカス

データ基盤の全体像

主な変更点は、これまで上記①〜⑤の全てを運用していましたが、①ログサービスと②データ転送基盤、⑤その他用途の運用をチームから外しました。逆にいうと、データマネジメント領域(③データ分析基盤と④BI基盤)のみにフォーカスする方針になります。こうした理由は、単純に負荷を下げることが主目的なものの、スコープ対象をデータマネジメントにすることで、課題である”データマネジメントの強化”に繋げたかったというのもあります。

もう一つ、データマネジメント力を身につけることは、”データ活用の武器を自分で作れるようになる”メリットもあることから、データアナリストのキャリアとしても意味のあることだと思えたのも大きいです。

方針2:”内製サービス”から”SaaS・マネージドサービス”への移行

データ基盤を構成するサービスの3箇所を、内製サービスからSaaS・マネージドサービスへ移行しました。

  • データ転送サービスのインフラとしてMWAAの導入
  • DWH開発ツールとしてdbtの導入
  • ログサービスとしてGA4の導入(一部導入済み。全体移行の途中)

移行理由は、”データ分析チームとしては、運用スコープが少なくなることで運用保守が楽になる”、”運用を引き受けるチームとしては、同様に運用保守が楽になることやキャッチアップコストが下がる”といった効果を狙いたかったからです。

導入の詳細記事は、dbtのみですがよければご覧ください。

engineer.retty.me note.com engineer.retty.me

結果・所感

運用のスコープを絞ること、SaaS・マネージドサービスに頼ることをした結果、今の所問題なくデータ基盤を運用できています。加えて、データアナリスト達によるデータマネジメント領域のインプットや議論が向上されことで、データマネジメント力の底上げに繋がったと感じます。
まだまだ移行ばかりであることや、移行中なものもあるため、油断をせずに運用したいです。

変化②:ディスカバリーの関心事が”やる・やらない”から”やり方・プロセス”に

ディスカバリーとは?」と思われた方向けに簡単な説明をすると、ディスカバリーとは”仮説に対してユーザーさんの解像度を上げていく探索と発見の繰り返し”を意味しています。ちなみに、定量分析・UXリサーチとディスカバリーの関係性は、ディスカバリーがユーザーさんの解像度を上げるための”行為そのもの”定量分析・UXリサーチはディスカバリーをするための”手法”という位置付けです。
詳細は是非、以下の記事をご覧ください。

note.com

さて、去年の記事でUXリサーチが組織に浸透したことを書きました。内容は、「これまでのRettyでは、意思決定をする際に定量分析は大事にするものの、その前提にある根拠や仮説は個人の経験・勘に頼りがちでした。そこに、UXリサーチという仮説や根拠の再現性を高める手法を加わえることで、組織の意思決定力の底上げに繋がった。」という話です。(詳細はこちら

そして今年は、組織でディスカバリーを”やる”のは当たり前、”やり方・プロセス”を洗練させていくことに向き合った一年だったと解釈しています。具体的にどのような取り組みをしたのかを紹介します。

<取り組み>
1/ ”良いディスカバリーとは”について議論
2/ 数をこなし学びを発信
3/ データアナリストFB制度&スキル定義の作成

1/ ”質の高いディスカバリーとは”について議論

今年の初め、ディスカバリーを強化すると意気込んだ直後、次の問が生まれました。

「良いディスカバリーとは何か?」

”そもそも”や”定義”を問うのはデータアナリストの性です。ディスカバリー力を高める最初の一歩は”良いディスカバリーとは”に向き合うことからでした。議論の過程を紹介すると、非常に長くなるので割愛します。結論だけ紹介します。

<良いディスカバリーとは>

  • 事業インパクトが大きい(そもそも事業インパクトの大きい問いを選んでいること)
  • 精度が高い(科学的根拠の強い分析・調査設計と実施ができている)
  • リードタイムが短い(問いが生まれたから回答するまでのスピードが早い)

このようにブレイクダウンすることの目的は課題を抽出するためです。各チームや個人によって課題は様々であるため、抽出課題の紹介は割愛するものの、抽出した課題からアクションプランを立てて実行するまでを行いました。

2/ 数をこなし学びを発信

1/で設定した課題は意識しつつ、その上でシンプルに量をこなして学びを深めることは大事です。今年は、沢山のディスカバリー案件を、PM・デザイナー・データアナリストのセットで行われることが多く、データ分析チームとしての学びの発信だけでなく、PMからの発信量も非常に多かったです。

いくつか記事を抜粋したので是非ご覧ください。

suttoco.net

productzine.jp

productzine.jp

3/ データアナリストFB制度&スキル定義の作成

1/と2/まででは、個々人の努力に依存してしまうので、チームとして持続的にディスカバリー力を高めるための仕組みが必要だと思いました。そこで、データアナリストFB制度の運用を開始しました。

engineer.retty.me

この取り組みは、まだ一度しか行っていないものの良い手応を感じたのでブラッシュアップしながら継続したいと思います。

まとめ

まとめると、良いディスカバリーを行うために、必要スキルをつける仕組みを構築し、量をこなした一年でした。このように振り返ってみると、”ディスカバリー力が上がるループ”が回り始めたことが何よりの変化かもしれません。来年はこのループをさらに加速させる一年にできると良いです。

総評

以上が今年の振り返りでした。
ここで、去年(2021年)の振り返りで掲げていた”今後の課題”に対する総評をしたいと思います。

前提:去年の振り返り記事で掲げた課題

(引用元:2021年振り返り記事のスクショ)

総評としては、課題に対しての”アクション”や”向き合う状態”を形成できたと思います。

<去年掲げた課題に対するアクション>
課題1:データマネジメントの強化
→変化①:データ基盤の運用を"内製ツールで全部やる"から"外部ツールやSaaSを積極活用へ"

課題2:定量/定性分析の精度向上
→変化②:ディスカバリーの関心事が”やる・やらない”から”やり方・プロセス”に

特に良かった点としては、課題2のアクションを個人やチームに留まらず、組織として実行できた点です。個人やチームだと、その個人やチームが無くなるとゼロリセットされるものの、組織のカルチャーとなると寿命が長くなるからです。

一方で、少しずつ事業成果を出せてきているものの、まだ大きなインパクトを残せていません。そのため、今後も課題に対するアクションを継続・ブラッシュアップするこで、大きな事業インパクトを残せるように頑張りたいと思います。

来年のデータ分析チームの体制

最後に、来年のチーム体制の変更点を紹介します。
データ分析チームを立ち上げてから5年間これまでMGRを努めてきましたが、今年の12月末を持って交代になります。チームはどうなるのか?平野は何をするのか?について簡単に説明したいと思います。

データ分析チームはどうなるのか?

後任はエンジニアリング部門の執行役員を担当する常松(@tunepolo)が一時的に担う形になります。引き続き、データ分析チームとしてのミッション”意思決定の最大化”を掲げて運営される予定です。

平野は今後何をするのか?

Rettyの売上グロースを担うセールス部門へ異動します。セールス部門では、営業戦略の策定と推進をプランナーという立場で担当する予定です。

異動理由は、職種問わず事業成果によりインパクトを出せるポジションで働きたいと思ったからです。そこで代表の武田や上司と相談し、直接売上に責任を持っているセールス部門に異動することに決まりました。

これまでの経験を活かして業績貢献に寄与できるように頑張りたいと思います。

おわりに

最後までお付き合いいただきありがとうございます。
今回の記事をもって、自分が筆者となるデータ分析チームの振り返り記事ラスト回です。データ分析チームを立ち上げてから5年間、毎年書いてましたので計5記事になります。毎年ボリューミーで書くのが大変でしたが、嬉しいことに「読みました!参考になります!」などの声も沢山いただいてたので書く励みになっていました。これまでの記事をご覧いただいていた皆様に感謝です。

また、このような発信によって、各方面からの登壇や交流機会が生まれたと感じてまして継続して良かったなと思うばかりです。

最後になりますが、これでRettyデータ分析チームは終わりではなく、むしろ新たなチーム体制でこれまで以上にレベルアップされていくので、界隈の皆様、今後ともRettyデータ分析チームとのお付き合いの程宜しくお願いいたします。